“難病の原因NF-κB

NF-κB(エヌ・エフ・カッパ・ビー)とは、核の中で働くタンパク質のひとつです。多くの病気を引き起こす分子のことです。細胞の核の中で遺伝子DNAにくっついて特定のタンパク質をつくらせ、いわゆる転写因子の働きがあります。つくらせるタンパク質は通常は、外敵から守る免疫を強くすることや、正常な細胞を死なないようにすることで体を守っています。しかし、NF-κBの作用が強すぎるとリウマチ、ガンなど多くの病気の原因になり、特に治りにくい病気の原因になっています。

通常NF-κBが活性化するのは細胞が刺激を受けた時です。 細胞の表面のレセプター(受け取り手)に、炎症を起こすタンパク質TNF-αや細菌の表面にある糖鎖LPSのような刺激物質が結合する場合です。いくつかのシグナル伝達を伝って、NF-κBが活性になり、核の中に入ってきて本来の能力を発揮するようになります。


しかし通常、正常な細胞の場合、NF-κBは細胞の中でおとなしくしています。 働く場所の核ではなく、核の外で細胞質というところに局在しています。 正常の細胞では、刺激がなければNF-κBは働きすぎることはないのです。


難病の場合…刺激がなくてもNF-κBが活性化

ところが、10年ほど前から多くのガンや白血病で、刺激がなくてもNF-κBが活性化されていることがわかってきました。それも特に治りにくいガンや白血病でこの活性化がみられることが多いのです。

乳ガンや前立腺ガンの場合、それぞれ女性ホルモン、男性ホルモンが促進因子であるため、治療にはこれらのホルモン+の働きを抑える医薬が使われます。このホルモン療法が有効なガンは比較的予後がよいのですが、ホルモン療法がほとんど無効で、どんな治療法をもってしても難治性のガンがあります。そして、特にホルモン非感受性ガンにおいてNF-κBが活性化されていることが多いのです。

NF-kappaB:ガンの悪性化を促進・転移を活発化

NF-κB
  アポトーシス(細胞死)阻害タンパク質を出して、ガン細胞を死ににくくする
  炎症をもたらすタンパク質(炎症性サイトカイン)を分泌
  この結果

ガンの周辺に多くの増殖促進因子や酸素を供給でき、ガンの悪性化を促進
多くのタンパク質分解酵素MMPもつくらせ、転移を活発にする
これは、ガンの最も厄介な性質のひとつである

NF-κB:マクロファージ細胞を活性化する

マクロファージという細胞は、普段は不要になった死細胞を吸収して分解したり、細菌など外敵を攻撃して、吸収する働きがあります。
マクロファージは活発になると大きくなり、ジャイアントファージとよばれます。
マクロファージは、ほぼ全身に分布しており臓器によって呼び名が異なります。

  肝臓…「クプファー細胞」
  肺 …「ダスト(ほこり)細胞」
  脳 …「ミクログリア細胞」

細胞内シグナル伝達

これらのマクロファージは外部からの刺激で強く活性化されすぎると体のいろいろな部分に炎症を誘導し、 多くの病気、リウマチ、動脈硬化、腎炎症、悪液質などの原因となります。
このマクロファージを活性化する中心的な転写因子はNF-κBです。

このようにNF-κBはガンと炎症が関与する多くの難治性疾患の発症と進展に深くかかわっています。そこでNF-κBを抑えると多くの難病が治療できると考えられます。