梅澤研究室はガンや糖尿病、免疫系に関わる病気の治療薬となるような物質を、天然すなわち土壌に住む微生物の培養液や熱帯植物の抽出液などから探索しています。
これを活性のある「もの」を「とる」ことから“ものとり”と呼んでいます。(一般的にはスクリーニングともよばれます。)
活性のある培養液や抽出液が見つかると、色々な分離操作を行って活性物質を
精製し、構造を解析します。
ポイントは、「何を標的とするか」「いかに効率良い方法で正体を暴く(単離精製する)か」で、これらの過程は宝探しに似ています。
近年、既知化学物質のライブラリーやコンビナトリアル・ケミストリーという分野が注目されています。
しかし、これらの方法では基本となる骨格がもともと知られている化合物に限定されてしまうため、未知の骨格を
見付けることは難しいです。そんな理由から最近、未知の骨格に新しい作用を求めた天然からのスクリーニング=ものとりが再評価されるようになってきました。そうした中、私達はライブラリーと天然の両方から新規物質を求め、日夜ものとりに励んでいます。
さらに、天然物の構造を理論的に改良する分子デザインの研究も行っています。
1989年、私たちの研究室では国内で初めて、
シグナル伝達阻害剤のスクリーニングという分野を開拓しました。
薬剤の作用機構を調べて行くと、新しい細胞内シグナル伝達の発見や、ある細胞内シグナル伝達の経路の重要性が見えてきます。
そこで、その発見をもとに新しいターゲットを定め、スクリーニング系を構築したりもします。
研究室は単に「もの」を探しているだけではありません。
見つけたシグナル伝達阻害剤を用いて、私たち自身で、がん、炎症、糖尿病の新しいメカニズムを発見するように努めています。
新しいシグナル伝達阻害剤は当然、新しいメカニズムを発見するための貴重な道具や武器となります。
自分たちでみつけた武器で新しい生命現象や病気の機構がわかったら、それはとても大きな喜びです。
また、シグナル伝達阻害剤は新しいメカニズムで働く未来の薬に発展する可能性があります。
これも社会にすぐに役に立つ大事な目標として、医薬を開発するための研究を行っています。